さていよいよ「モノ」についての解説です。なぜ「色」ではなく「モノ」なのか。

前々回のコラムで「目」についてお伝えしました。「桿状体(かんじょうたい)」と「錐状体(すいじょうたい)」で感知された信号の強さの比率で「色」を認識していますと。光の色(光源色)はこの時点(光と目の2つの条件)で認識できます。

モノがなぜ見えるか?それは「光」が「モノ」にあたって、その反射した「光」が目に入るから見えるというのは小耳にはさんだことがあるかと。実は「色」も同じなんです。モノ自体には色は付いていないんです。あるのは「ある波長を吸収・透過」して「それ以外の波長」を反射する性質(分光反射率特性)があるだけなんです。モノが色を所有している訳ではないんです。

ンなバカな!?気持ちは分かります。世の中無彩色に感じられたかも知れません。安心してください。ちゃんと皆さんの目に色は届いています。ただし分光された「波長が」という条件が付きますが。

ではこの分光反射率特性とは何ぞやという所ですね。

上記の図は「白色光」が「赤い紙」を見ている人がいる。この時どうゆうことが起きているかというと、

①光源から長・中・短波長を含む光束が紙を照らします。

②紙が多くの中・短波長を吸収・透過します。

③残った長波が反射しています。

④その長波を認識した目の錐状体・桿状体が信号をキャッチします。

⑤脳が「赤い色の紙」だと認識・・・・・これが起こっていることです。

もしこれが短波長のみを多く吸収・透過する特性を持っていたら、脳は「黄色い紙だ」と判断しますし、全ての波長を多く吸収・透過する特性を持っていたら「黒い紙だね」と脳は判断します。すべての波長をほとんど吸収・透過しない特性を持っていたら「白い紙」だねと脳は判断します。これらの物質が持つ特性を「分光反射率特性」といいます。つまり「色」とは光がモノに当たった結果、変化した波長を目が受け取るという「波長の変化」と言い換えることができる事なんです。

青色LEDライトがでてもうすぐ10年。時の経つのは早いなぁとしみじみする前に、では、この短波長のみを放射する青色LEDで上記①~⑤の紙を照らしたらどうなるか?

①’光源青色LEDから短波長のみの光束が紙を照らします。

②’紙が多くの中・短波長を吸収・透過します。

③’残った長波を反射させようとしますが、でも反射する波長がありません。

④’錐状体・桿状体が信号をキャッチできない。

⑤’脳が「黒色の紙」だと認識・・・・・このようになります。

ちなみに図の所に書いてある「分光反射率特性の反射率≠反射率(目に入らない光は観察対象外で含まないため)」は何?という所ですが反射率という言葉は厳密に言うと「物体に入射した放射束又は光束に対する、反射した放射束又は光束の比」とJISで定められており、訳すと「紙にあたった光束が吸収・透過された分を除いて、人の目に届いた光、的外れに反射した光を全部ひっくるめた光の合計」と「紙にあたった光束」の割合。と言い換えることが出来ます。

これは上記①~⑤の過程の①~③つまり光源側からの視点になります。

分光反射率特性の反射率とは実は「輝度率」のことなんです。「輝度」ではなくて「輝度率」です。輝度率の定義は「同じ光(放射)の照射を受けたとき、自ら発光していない(放射を発していない)面の(放射)輝度と、完全拡散反射体の(放射)輝度との比」とJISで定められております。

ここでNEWワードが出てきましたね。「輝度率」と「完全拡散反射体」。「輝度率」についてはのちに説明します。「完全拡散反射体」は入射した光をあらゆる方向に万遍なく同一の輝度で反射し、吸収や透過をされない反射率が1の理想的な物体のこと。分光反射率特性の図で言う所の「すべての波長をほとんど吸収・透過しない特性を持っていたら「白い紙」だね」の「ほとんど」が「全く」とシビアになり、鏡面反射の起こらない拡散反射のみが起きる物質だと思ってください。

光がモノにあたったって「輝度」には関係ないやん!と思われるでしょうが、前回コラムで「光を照らされたものは、「二次光源」と化す」とお伝えしましたのを思い出していただければ。人の目から見た紙は二次光源となっておりますので、上記①~⑤の過程の③~④で「光度」や「輝度」と同じように観測点(目)から紙という方向の指定が入ります。「紙から届いた光が全てであって、それ以外の光がどこに行ったかは関係ないよ」。という事になります。

これでようやく「色」とは何なのか、「色が見える」とはどういうことなのかを説明し終わりました。ここまでが前提条件のようなものでして、これらを踏まえて次回以降「バルール」に迫っていきたいと思います。

今回も引き続きCCS株式会社様、色彩用語辞典、他多数サイト様のおかげです。ありがとうございます。

この記事を書いた人

スタッフ門前
おとなの美術室スタッフ
おとなの美術室事務スタッフ。 門前の小僧習わぬ経を読むから命名。サブカルをこよなく愛するナイスミドルである。一時期ブログ投稿を降板させられたが、10周年を機に復帰。