前回に引き続き深川先生のインタビューを続けます。3DCGの仕事をされていることもあり、自宅ではかなり高性能なPCをお使いだそうですが、ZBrush用のPCは実際どの程度のスペックが必要なのでしょうか。ZBrushのソフト自体が10数万円もするということもありますし、デジタル造形にはどのくらいお金がかかるのか等についても教えてもらいましょう!

【門】MayaやMaxとかメジャーな3Dソフトだと、CPUの性能やグラフィックボードの性能にとにかくお金を湯水のように使い、メモリを挿せるだけ挿し、タワー型の大きなケースに大型の冷却ファンとハイワットの電源が付いているなどのイメージがあるのですが、Q.これから始めるならどんな機材を揃えればいいですか?やはり50万円近くかかってしまうの?

↑廉価バージョンのZBrush Coreオンリーでも、手数をかければこの位は作れますが…?
ワコムさんHPに制作工程記事有り)

【深】PC性能はもちろん高いに越したことはないんですけども、いきなり高価なPCを購入されなくても大丈夫です。GPU処理(グラフィックボードの性能)に頼らない仕様のおかげで、案外どんなPCでもZB自体はしっかり動いてくれるはずです。最初はまずお手持ちのPCにインストールして使ってみて下さい。その動作速度に不満が出てきたり、いざ本格的に重たいモデルを扱うとなればもちろんもっと高いスペックが必要になってくるのですが、ZBrush用としてはとにかくCPUとメモリに予算をかけるのが基本ですね。
ちなみに、ある程度まではモデルの作り方によってデータの重さをコントロールすることも可能です。「ダイナメッシュ」や「スカルプトリスPro」といったハイポリベースの機能で細かい造形をするには、やはりどうしても高性能なPCでないと快適に作業出来ないのですが、粗いローポリゴンのモデルをベースにしてSDivレベルを上げていく作り方であれば比較的軽く扱うことが出来ると思います。
また、

ZBと言えば筆圧でスカルプトの強弱がつけられる事が特徴でもあり、ペンタブレットは必須になっています。なお現状のZBではペンの傾きなどに対応した操作が無いため筆圧感知機能だけ付いていればOKで、ワコム製ペンタブレットでいうと上級モデルの「Intuos Pro」ではなく、入門機の「Intuos」でも特に不足はありません。
筆圧感知レベルの細かさについても、最近の製品であれば廉価版でもう十分な性能を持っています

あと個人的には液タブ・板タブの両方を併用していますが、ZBrush用だけで考えれば強いて高価な液晶タブレットを買う必要はなく、いわゆる「板タブレット」の方がZBrushには向いているようにも思います。

【門】そういえば使い慣れたノートPCを持ち込まれて受けていた方もいらっしゃいましたね。液タブは16インチ以下ですと文字が小さいからボタンに何が書いてあるか分かりづらいし(特にZBrushは極小サイズのボタンが沢山あるので)、首への負担も大きくなるし、姿勢もどうしても悪くなりそう。そういう意味では板タブレットの方が確かに良いかもしれません。個人的には液タブの発熱が、特に夏場にはちょっと厳しく思えますね。
話は変わりますが、最近Pixologic社からMAXON社に移ってQ.サブスクリプション版と買取版がありますが、今後どうなると考えてます?どっちがお得なのでしょう?

【深】現在の販売形態がそのまま続くのか、今後変更されるのかは全く分かりません。
永続ライセンス版のアップデート価格がまだ不明ですし、その頻度や内容によっても選択肢は変わって来ると思いますが…何ともお答えできずにすみません。

【門】公認インストラクターといえども、そういった内情までは知らせてもらえない…ということで致し方ないですね。さて、最後の質問になりますが、デジタルツールの宿命ともいえる、Q.ソフトが落ちたり、固まってしまった場合ってどう考えれば自分へのダメージが少なくて済みますか?

【深】PCで作業している限り必ずついて回ることで、多かれ少なかれ時間的・精神的ダメージは避けられないですね…。しかも忘れた頃に限って起こるので、なるべくダメージが最小限に済むよう、日頃から出来るだけこまめにデータの保存やバックアップをするように気を付けています。ずっと同じ1つのファイルで上書き保存を続けるのもリスクがあるため、ファイル名に日付や連番などを入れた別名保存で作業履歴を残しておくようにすると、万が一の場合にも過去のデータからのリカバリーが利くのでお勧めです。

←最終データ(入稿データ)

【門】やはりそれが基本なんですね。履歴を保存していくと、当然ながらファイル数の増加でどんどん容量も食いますが、ストレージの値段がずいぶんこなれてきたのが救いです。あとはイベント前や締め切り間近に起こらないことを祈るばかりですね。ありがとうございました。

この記事を書いた人

スタッフ門前
おとなの美術室スタッフ
おとなの美術室事務スタッフ。 門前の小僧習わぬ経を読むから命名。サブカルをこよなく愛するナイスミドルである。一時期ブログ投稿を降板させられたが、10周年を機に復帰。