門前です。フィギュア系の講師インタビューが続きます。今回紹介する先生は、お酒は飲めなくても飲み会の席では飲んでる人よりハイテンションな「深川先生」です。ZBrush基礎講座』を担当していただいてます。

ZBrush基礎講座は開講当初(2013年10月期より)にはまだ教材の参考になるものがごく限られていて、“BLESTER”さんこと和田真一氏の教えられていた専門学校で習うか、同氏のDVDを見るか、経験者向けの講座が1校行われていただけと記憶しています。

↑ ZBrushでの深川先生オリジナルフィギュア処女作

【門前:以下門】初心者向けのZBrush講座がほぼ存在しない状態で、大変じゃありませんでした?当時は先生にとっても講師業は初めてのご経験だったんですよね。

【深川先生:以下深】その頃はまだZBrushの使用経験もさほど長くなく、カリキュラムを考えながら自分自身でも必死に詰め込み勉強をしていました。
初体験ということでは、商業フィギュアのデジタル原型仕事もほぼ同時期に並行して始めていたりして、今から思えば知識量的にもスケジュール面でも色々と綱渡りの状態でしたね。それでも受講生の皆さんが喜んで下さったり、後に“Pixologic公認インストラクター”の肩書きまでいただいたりしたことで大きな手応えが得られました。
かつて所属していたCGスタジオでも、同僚にソフトの機能などあれこれレクチャーするのが好きだったこともあり、講師の仕事そのものには当初からやり甲斐を感じたのを覚えています。

【門】Pixologic社のトマ氏が来日された際(2015年)、おとなの美術室の教室にまで見学に来て下さった事もありましたね。

ちなみに実際の講義内容として、Q.教室で伝えたいと思っているのはどういったことでしょうか?

【深川先生:以下深】授業のスタンスとしてはまずは機能や作業手順、注意点などを詳しく系統的に解説し、ZBrushへの理解を深めてスムーズに効率的に使いこなしてもらえるようになることを目指しています。

ZB基礎講座の内容は、ローポリモデルをベースとして高精度に造形する手順を特に重視していますが、造形の工程や手法にはいろいろと多くのスタイルがあります。これは人により大きく好みが分かれる部分も多いため、あまり画一的にならないよう講座中盤からはハイポリモデルの作業工程も取り入れたり、出来るだけ多くのパターンやアプローチ方法を紹介して引き出しを増やせるよう意識しています。
その中から各受講生さんごとの目的に沿った機能や方向性、手に馴染むやり方などを探ってもらえると良いですね。

【門】どれが正しいとか間違っているとかいうことではなく「沢山の選択肢を提示するなかから、やりやすい方法を見つけてね」という感じでしょうか。とはいえ、その講座の特性上経験豊かなプロ原型師の方たちが受講される場合もしばしばある訳ですが、そんな中でQ.講義時に気を付けていることなどはありますか?

【深】時により「この機能/手順はアナログ原型でいえば〇〇のようなもので」といった表現も交えて、デジタル造形に馴染みの薄い方にも直感的に伝わりやすいよう心がけています。
また、受講生さんそれぞれにペンタブやキー操作等の習熟度に大きな差があるため、あまり慣れていない方でも取り残されることがないようフォローに努めています。
「安定した操作のためのお勧め基本ポーズ」として、両手の親指をペンのサイドスイッチとキーボードのAltキーそれぞれへ常に添えておくと良い…なんていう説明もしていますね。

さらに、もともと一定以上ZBを使える方やプロ原型師さんが受講されることもありますので、まったくの初心者向け講座にはならないよう少し踏み込んだ部分まで触れていったり、何よりも実践的な使い方を紹介していくことが肝要と考えています。

↑テキストの一部抜粋

【門】そういったこだわりから、ほぼ毎回のように授業が延長戦に突入することになる訳ですね。20分以上もの延長はサービス精神旺盛すぎのような気もしますが、教えるべき項目もバージョンアップに伴い増えていきますし、仕方のないところなのでしょうか。講座としてはフィギュア制作という切り口で教えられてますが、Q.これからZBrushを始められる方に伝えたいことはありますか?

【深】講座の方もこれまでと変わらず、受講生のみなさんが楽しくストレスなくZBを使えるようにサポートを続けていきたいです。初心者の方に限らず1回限りで受けられる”ZBrush添削塾”もありますので制作工程や機能の使い方で悩んだり、行き詰まったらうまく利用して欲しいです。

【門】ZBrushあるあるではないですが、苦笑いが出るような落とし穴もありますからねぇ。私個人としてはアナログだと目がつらくなってきてから、デジタルなら画面上でいくらでも拡大表示出来るというのは本当に助かりますし、仕様を変更する前と後とで分けてデータを持っていられるので、見比べて良い方を選ぶという事も出来るのはありがたいですね。その点だけでもデジタル造形ツールの意義は大きいかと思います。

次回へ続く

この記事を書いた人

スタッフ門前
おとなの美術室スタッフ
おとなの美術室事務スタッフ。 門前の小僧習わぬ経を読むから命名。サブカルをこよなく愛するナイスミドルである。一時期ブログ投稿を降板させられたが、10周年を機に復帰。