ようやくバルールに戻ってこれました。もう斜め上に行き過ぎて半分戻れないかも、、、とも覚悟しておりました。
では、まずは最初に調べた復習から。繰り返しますがここからは個人的な解釈になりますので間違っているとまでは言いませんけど、正しくないという所があるかもしれません。なので疑いながら読んでください。
「絵画の画面における、明暗と位置関係の対応、及び、位置関係の指示の程度をバルールと呼ぶ。」(Wikipediaより引用)。
「目で見て認識した色の階調」と「画面上での色の階調」の違い。絵画の画面における、色彩の色相・明度・彩度などの相関関係による「色の価値」を指す。(DNP大日本印刷artscapeより引用)
色を「濃い」「薄い」と言葉で表現することがありますが、「分光光度計」という機械で測定し、色の濃さを数値化することができます。(中略)色が濃いほど色価の数値が大きくなります。(神戸化成株式会社 技術情報より引用)
基本的にはイラストにおいて画面の奥行きに対応する適切な色遣いのことである。画面上のある位置においてそれが浮いて見える(単に画面についた汚れに見える)かどうかという人間の感覚と実際の写真や写実な絵との間にはずれが存在し、バルールを整えるとは人間にとって浮いて見えないように色遣いを調整するということである。(アニヲタWiki(仮)より引用)
なるほど。この一連のコラムで色の勉強を重ねてきた皆様なら「なるほどね」の部分と「おや?」と思うところがあるでしょう。アニヲタWiki(仮)様が一番しっくる来るような。
人の目が判断する認識するということは、明度というよりも輝度を感じてそれを明度という形で描く(表す)(しかもデジタルなら再度輝度に変換してというオマケつきで)わけですが、このあたりがポイントになりそうです。それ以外にも他の色からの影響や色の特性にも触れているようです。
絵全体で一番白いところと黒いところはちゃんと認識しておこうね。というのが1点。これは真っ白に皿を塗ったらそこにハイライトは描けないですよね。同様に真っ黒に布を塗ったら、そこに影は付けられないですよねという事ですね。イラストの着彩をする際に下図、四角内の端(赤で塗られたエリアの所)の色は基本の色にしない方がいいよと教えてもらいましたが、そういうことですね。
2点目は2つ以上のオブジェクトがあり、前後の関係を出したい場合には奥の物は明度・彩度が落ちてコントラストが落ちますよ。同じ明度・彩度・コントラストで塗ると同じような距離感の所にあるように見えますよということ。背景だと遠景は空気遠近もかかって青っぽかったり白っぽかったりもしますしね。最後は地平線や水平線と同化したりして。もちろんパースでの遠近感やぼやけ具合による遠近感もありますので、それらの要素を抜くとこういう事ではないかと。※図では見やすいように極端な色を使用していますので、違和感を感じるかもしれません。
(A)は手前に赤い物、一番奥に青い物、その中間に緑の物を表現したいと考える。HLS色空間で小耳にはさんだ「スプリットコンプリメンタリー配色」を意識して赤は(H0,S90,V90)、緑は(120,90,90)、青は(240,90,90)と単純に色相のみを変えて塗ると(1)図のようになる。
すると緑は赤よりも明るく感じるため、手前に見えてしまいます。暖色である「赤」は「進出色」で、寒色であり、「青」は「後退色」なので青は赤の奥に感じます。
まずは緑を引っ込めたいところです。彩度と明度を落とします。
緑が奥に引っ込んで、ぐっと赤が前に出てきた感じがしますね。
位置的にはこんな感じでしょうか。もっと青を奥に引っ込めたいので、青の彩度・明度を落とします。
何とか当初の距離感のイメージ(A)に近くすることが出来ました。今回の図の要素では明暗と暖寒色のみのとなっており。空気遠近は含んでおりませんので遠景まで含んだ背景と考えると違和感がありますね。
バルールはどうもこのように明度・彩度コントロールして距離感をコントロールする手法のようです。HSV色空間の明度の数字だけいじればOKかというとそうではないところが難しいところ。人の目に入って判断するという事は実はこの「明度」は「輝度」になります。つまり明度で判断するのではなく、輝度で判断する必要があります。
既にこのコラムで知識を付けられた方なら「ピン」とくるかもしれませんが、色相に強弱があります。「分光視感効率」です。緑の色は強く感じますとか。あれです。そこで客観的に作品を輝度として判断するのにはデッサンでコツコツとその感覚を磨くか、その感覚が無い私なんかは機材に頼るしかありません。
クリップスタジオですと、
レイヤーパレットの最上部に新規レイヤーを作成→
レイヤーの合成モードを「色相」「彩度」「カラー」のいずれかに変更。→
無彩色(「白」~「グレー」~「黒」)を選択してそのレイヤーを塗りつぶす→
輝度で見た場合のグレースケール画像の出来上がり。
これで明暗を判断して色を調整していくと言う訳です。調整は格個別に明度・彩度を修正したり、合成を「輝度」に変更したレイヤーでグレーの明暗を加えいていく方法もあります。
既出の(1)と(3)はこのようになりました。
また、色がゴチャゴチャしている時はこの輝度を元に合わせてあげると落ち着いた雰囲気になります。この方法はYoutubeや「マール社 光と色のチュートリアル パク・リノ 著」からも参考にさせていただいております。
ただですね、、、バルールという意味ではこれだけじゃ足りなくて、その色が塗られている面積でも感じ方が違ったり、塗られている場所(隣の色との塗られている距離)によっても影響があるので、最終的には「目」に頼らざるを得ません。
もちろん意図してその色を選択しているのでした全く問題ないのですが、意図せず・・・というのであれば試してみるのも良いかもしれません。特に彩度の高い色を好んで使われる方お気を付けください。彩度の低い色をメインで使われる方は比較的発生しずらいのですが、裏返すとメリハリの効いていない、コントラストの効いていない平面的な絵になりやすいので、別の意味でご注意ください。
今回バルールの話をするのに想定よりも多くの書籍や論文、企業サイト、個人サイトを参考にさせていただきました。この場にて御礼申し上げます。このバルールという言葉がどうやら「マンセル」がフランスで仕入れた知識を英訳するのに「明度・バリュー」と翻訳者に伝えてしまったことが私たちを悩ませる原因になったかもしれないと、最後に見つけたゴシップを入れて終わらせていただきます。